DESIGNER:山本 愛

洋服は一本の糸から始まり、デザイン、素材選び・パターン・縫製へと作業が受け継がれ、一着の服が完成します。
どれか1つが欠けてしまっても、最高の一着は出来上がりません。服作りのすべてに関わる人の想いが、一着の服に命を吹き込み、生み出します。
東京三恵では、個性豊かな職人さんたちが日々服作りに励んでいます。そういった職人さんたちの想いや情熱にスポットをあて、紹介していきます。

今回ご紹介するのは、デザイナーの山本 愛。
デザイナーとして、東京三恵の一員としての彼女に迫っていきます。

デザイナーになったきっかけ

親戚に画家がいてアートが身近にある家庭環境で育ったので、絵、油絵を幼少のころから自然と描いていました。その流れもあって、将来はアーティストになりたいと漠然に思っていました。
高校卒業後、仕事としてアートに触れることを考え、好きな服とアートが重なる服飾デザインの道へ進むことにしました。

キャリアについて

服飾の専門学校で3年間学んだ後就職し、今まで20年以上デザイナーとして仕事をしてきました。途中、結婚して妊娠・出産を機に仕事から離れたものの、やっぱりこの仕事が好きで一生続けていきたいなと思い、こうして再び仕事を続けています。

まだ就職して間もない頃、先輩から、「同じ職場に長く留まっていてはいけない」というアドバイスをいただいたんです。それは、デザイン感度のマンネリ化を防ぐため。「同じ会社に5年はいないようにしよう」と思ってやってきました。
今振り返ってみると、それぞれの会社で商品に対する異なるスタンスを通じて、アートとしての側面と、誰かが着るという実用的なプロダクトとしての側面。この大きな違いを知り、自分の中でほどよいバランスがなんとなく持てるようになった気がします。また、転職する度に新しい場所で感じる緊張感と新鮮な感覚が、デザイナーとしての自分をリセットしてくれて、今の自分を作ってくれたのだと感じています。

デザイナーとしての表現

先ほど言ったような、アートとしてとらえるとどうしても「主観的」「個性的」という言葉が先に立ちますが、プロダクトとしてすでに洋服が持っている基本の形を生かすことも必要だと思っています。
その点ではシーズンごとのイメージソースはトレンドなどを参考にしつつも、そこに今までの経験や自分なりの個性・好きというエッセンスを入れて展開することを考えます。

私の場合はベーシック、トラッド系をスタイルのベースにして、そこにちょっとした可愛さを足して作り上げていきます。
「おしゃれ」ってファッションリーダー風な着こなしをすることだけではなくて、自分の中の「定番」スタイルを大事にしながら、ちょっとしたひねりや遊び心や、エッセンスとして流行を取り入れることでもあると思っています。

素材選び

デザイン画を描く際には、同時にどんな材料で作るのかを考えます。

最近では、海外で生産され比較的安価に入手できる素材が重宝されていることも多いのですが、日本でもウールであれば愛知県にある尾州、コットンだったら静岡県の浜松など、とてもいいものを作っていらっしゃる方たちがいて、私はそういった丁寧に作られた素材が好きです。

生地ってそんなに違いがあるの?と思われるかもしれませんが、例えば生地になる前の糸の段階で、撚糸(ねんし)と言って糸をねじるような工程があります。このちょっとしたさじ加減の違いによって生地にした時の風合いが全然違うものになるんです。

生地の色も、先染めといって先に色が染まっている状態で「織り」で表現していく方法と、後に染める方法があったり。

服は、デザインだけでなくて、素材一つどれをとってもそれぞれに引出がたくさんあります。

私たちは、遠方にも足を運んで実際に産地を訪ね生産者の方たちにお会いして生地を作ることがあります。
ただ、これ!というだけでなく自分が描いたデザインを、素材作りの背景と重ね合わせて選んでいくことが素材を選ぶということだと思っています。

私にとっての服作り

素材選びでも少し触れましたが、服って本当に、生地1枚を作るにもそうですし、ボタンはボタンで専門的に作っている人たちがいます。みんなプロじゃないと作れないんです。

私が、素材の良さ、職人の技。全部を受け取ってデザインしたものを、今度はパタンナーさんが受け取って立体にして型紙という設計図を作ってくれる。その設計図を受け取った縫製職人さんが一着にしてくれる。このバトンの受け渡しで出来上がった一着を見た時に、たまらない喜びがあります。